ダイエット開始から29日目。 午前3時20分。この時間に目が覚めるのは、もはや生物学的な本能に近い。 枕元のスマホを手に取り、暗闇の中で「戦いの準備」を開始する。
1. 10本のシェイカーと「錬金術」の朝
キッチンに立つ私の前には、10本のシェイカーが整然と並んでいる。 50歳、119kg。この巨体を動かすためには、単なる食事では足りない。精密な「調合」が必要なのだ。
- イヌリンと微粉末セルロース: 現代のダイエッターに不可欠な食物繊維の二枚看板。
- プロテイン: 筋肉という名の神殿を維持するための礎。
- アミノバイタルゴールド × マルトデキストリン: ジムという戦場へ向かうための高純度燃料。
これらを、まるでお守りを並べるように準備していく。最後にカフェインの錠剤を流し込み、私の意識は完全に覚醒する。 ジムへの道すがら、コンビニで買う濃い目のブラックコーヒーと焼きおにぎり。これが、これから始まる「破壊と再生」の儀式の前の、唯一の安らぎだ。
2. 深夜ジムの静寂と、奇妙な共犯関係
午前4時。ジムのフロアには私しかいない。 貸切状態の静寂の中で、鉄の塊を上げ下げする。自分の荒い吐息だけが響く。
しかし、筋トレを終え、仕上げのエアロバイクに跨る頃には、いつもの「彼」が現れる。 名前も知らない、いつものおじさん。 深夜のジムで、二人して黙々とペダルを漕ぐ。 鏡に映る巨漢の私と、小柄なおじさん。 言葉は交わさない。しかし、そこには確実に「この時間にここへ来る狂気」を共有する者同士の、シュールで濃密な連帯感があった。
帰宅後、さらに追い打ちをかけるように『FitBoxing 3』を30分。 プロテインと汗が混ざり合う中、体重計に乗る。 119.4kg。 数字は嘘をつかない。だが、これだけでは終わらないのが現代のダイエットだ。
3. AIが告げた「111.0kg」という名の預言
シャワーを浴び、ブログの編集作業をしていた時、スマホが短く震えた。 食事管理アプリ『カロミル』からの通知だ。

「AI分析:3か月後の予測体重は111.0kgです」
画面を凝視する。111kg……。 それは、今の私からすれば、地平線の彼方にある幻のような数字だ。 AIは過去28日間の私の執念を読み取り、冷徹に「お前はこのまま行けば、そこへ辿り着く」と予言した。
「信じていいのか……?」
胸が高鳴る。しかし同時に、ある種の恐怖が襲う。 もし、今日、私がサボれば? もし、今日、私がこの予言を裏切れば? 機械が示した「未来の自分」という希望が、今の私に重くのしかかってくる。
4. ブッキーマウスの影と、怪盗団の誘惑
この「AIの予言」という名の全能感に酔った私は、勢いで『ディズニー ミラネス フィットネス』の体験版をダウンロードした。
画面の中で踊るミッキーを見ながら、私の脳内に一人の推しが浮かぶ。 VTuber、白上フブキ。 彼女がミッキーの真似をして演じる「ブッキーマウス」の、あの絶妙な一人二役。 「白上なら、一人で二役できるよなぁ……」 そんなオタク的な雑念を抱えながら、ブッキーの声(脳内再生)をBGMにスクワットを開始する。
腕を小刻みに回しながら腰を落とす。 普段のストイックな筋トレとは違う、ディズニー特有の「楽しげな負荷」が、私の太ももを容赦なく責め立てる。 「これ、いいかも」 気づけばAmazonの「注文を確定する」ボタンを押していた。

しかし、その直後。体が「異変」を告げた。 鼻水が止まらない。熱を測る。36.7度。 職場からのLINEには「風邪が流行中」という不穏な文字。 AIの予言を信じる私の前に、生物としての「限界」が立ちはだかる。
追い打ちをかけるように、『ペルソナ5』コラボのお題がFitBoxing 3で解禁された。 怪盗団が私を呼んでいる。体調は悪い。だが、ここで止まればAIの予言が狂う。 気がつけば、フラフラになりながらさらに20分、追加でトレーニングをこなしていた。 11時30分。私はついに力尽き、HMBサプリだけを飲んで泥のように眠りに落ちた。
5. AIの「正論」に抗う、50歳のプライド
15時に起き出し、昼食としてヒハツ(ロングペッパー)をまぶしたゆで卵3個と納豆2パックを食す。もはや食事というより、薬の処方に近い。
夕食は、白身魚のフライになめこの味噌汁、そして茶わん蒸し。 ここで、またしても「数字」が私を裏切る。 「茶わん蒸しにこれほどの塩分が……」 リコピン2倍のトマトジュースを流し込み、意地でスクワット100回をこなす。
本日のカロリー収支は1984/2712kcal。 大幅なマイナス。本来なら「勝利」のはずだ。 だが、有料会員特典の「食事アドバイス機能」を試すと、AIはこう宣告した。

「脂質の摂りすぎです」
計算を見る。脂質は60.8g。目標値の81.4gを大幅に下回っている。 「……何を言ってるんだ?」 私は混乱した。脂質の絶対量は足りている。目標範囲内だ。なのに、AIは「摂りすぎ」と私を咎める。
AIの予測する「111kg」という未来は信じたい。 だが、この目の前の「脂質摂りすぎ」という冷徹な誤診(と私は呼びたい)には、到底納得がいかない。 機械が示すデータが正解なのか、それとも、このボロボロの体で戦っている私の直感が正解なのか。


6. 湿度20.8%という名の死地
夜。喉の痛みが限界に達していた。 ふと、部屋の湿度計に目をやる。
20.8%。
「……あかんやん。砂漠やん」
そこにあったのは、もはや生命が維持できる数値ではなかった。 AIがどうこう、脂質がどうこうという次元ではない。 物理的な環境が、私を殺しに来ていたのだ。
慌てて今季初の加湿器を起動する。 「のど・鼻モード」のフル稼働とともに、私の部屋にようやく湿り気が戻る。 AIの予言、謎のアドバイス、忍び寄る風邪の影、そして20%の乾燥。
私は、加湿器の霧の中で思う。 明日、目が覚めたとき、私はAIの描く「111kg」へと一歩近づいているだろうか。 それとも、この喉の痛みに屈して立ち止まってしまうのか。
50歳、119.4kg。 AIとの奇妙な共同生活(バトル)は、まだ始まったばかりだ。
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